
整形外科
整形外科
整形外科は、運動器を構成するすべての組織(骨・関節・軟骨・筋・腱・靱帯・神経など)の疾患や外傷を治療する診療科です。打撲・捻挫・脱臼・骨折などの外傷、肩こり、膝・肩・腰などの疼痛など日常的によくみられる身体の痛みや違和感・しびれを扱います。また、若年者のスポーツ障害、加齢に伴って生じた関節疾患や骨粗鬆症、関節リウマチ、痛風、骨・軟部組織の腫瘍、先天性の疾患などの診療も行い、年齢、性別問わずその内容は多岐にわたります。
私は、大学病院や関連の基幹病院で20年以上にわたり、最前線の臨床・教育・研究の現場に携わり、その中でも肩関節専門班の一員として様々な肩関節外科手術や肩関節専門外来を行ってまいりました。肩関節痛や手が上がらないなどで来院された患者さんの中には一般的な五十肩以外にも様々な疾患が含まれております。先ずは適切な診断、治療が必要です。また、必要があれば鏡視下手術や人工関節置換術などの適応についてもこれまでの経験からアドバイス可能です。
当院では、小さなお子さんからご高齢の方まで、すべての年齢層の患者さんを診察いたします。身体のどこかが痛い・しびれる・手足が思うように動かせないといった症状や運動器についてのお悩みや困りごとがありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
患者さんのお悩みを親身になってうかがいながら、健やかでイキイキとした生活を取り戻すお手伝いをします。何でもお気軽にご相談ください。
腱鞘炎(けんしょうえん)
主に手首や指などの腱鞘と、その部分を通過する腱に炎症が起こった状態をいいます。腱鞘のところでスムーズに腱が動かなくなり、手首や指の付け根が痛んだり、腫れたりします。主に手の使い過ぎが原因で、スポーツや仕事(パソコンやスマホ)で指をよく使う仕事の人に多いのが特徴です。治療は、局所の安静、投薬、腱鞘内ステロイド注射などの保存的療法が行われます。
変形性関節症
関節症は加齢、肥満、遺伝的素因に加え、外傷など機械的刺激によって、軟骨の変性、摩耗が生じ、それが進行して発症します。このため膝関節や股関節の頻度が高く、重症化すると日常生活動作での障害が大きくなります。手術的加療が必要となるケースでは、定期的に診断を受けることが進行予防に有効です。変形性膝関節症は、高齢者になるほど罹患率が高く、主な症状には膝の痛みと水がたまることがあります。軽度の場合、鎮痛剤を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射をしたりします。また運動器リハビリテーションや膝を温める物理療法を行います。重症の場合は手術治療を検討します。関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り術(骨を切って矯正する)、人工膝関節置換術などがあります。変形性股関節症は、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。進行するとその痛みが強くなり、持続痛(常に痛む)や夜間痛(夜寝ていても痛む)が出現するようになります。保存療法で症状が取れない場合、人工股関節置換術が検討されます。
関節リウマチ
免疫の異常によって関節に炎症が起こります。初期には手や足の指の関節が対照的に腫れ、朝、こわばるような症状が現れます。人によっては膝関節や股関節などの大きな関節にも病変が認められ、水が溜まるなど動きにくくなります。痛みのために日常生活に支障が出てきます。関節の症状以外にも疲れやすくなったり、体重が減少したり、食欲が低下するなどもみられます。放置していると軟骨や骨が破壊されて関節の変形が進行してしまうため早期の治療が重要です。
肩こり
首や肩の筋肉が緊張し硬くなり、首のつけ根から背中にかけて張る、凝る、痛いなどの症状があり、頭痛や吐き気を伴うこともあります。連続して長時間同じ姿勢をとる、首・背中が緊張するような姿勢での作業、姿勢が悪い人(前かがみ・猫背)、運動不足、精神的なストレスなどで生じる筋肉疲労や血行障害が原因となります。同じ姿勢を長時間続けない、肩を温めて筋肉の血行を良くする、適度な運動や体操をする、入浴で身体を温めてリラックスするなどで予防を心がけましょう。ただし、高血圧症、眼疾患、頚椎疾患、耳鼻咽喉科疾患、肩関節疾患の随伴症状としての肩こりなども少なくありませんので、まずはご相談ください。
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)
中年以降、特に40歳以降に多くみられます。肩関節を構成する部分(骨・軟骨・靱帯・腱)などが老化し、肩関節の周囲に炎症が起きることが原因と考えられています。しかし明確な病態や定義は存在せず、除外診断となります。自然に治癒することもありますが、適切に治療しなければ、日常生活に支障が出るばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。急性期にはまず安静を心がけ、消炎鎮痛剤の内服、肩への注射が有効です。急性期を過ぎてからはホットパックなどの温熱療法、また拘縮(こうしゅく)予防や筋肉を強化するための運動療法を行います。
腱板断裂
腱板は肩関節を安定化させる4つの筋肉の総称で、転倒などにより腱の一部が完全または部分的に断裂します。50代以降では自然に切れていることもあり、その多くは無症状ですが、ときに夜間痛や肩の挙上時に疼痛が見られます。診断にはエコー、MRIなどが有用です。炎症による疼痛が見られるときには肩にステロイド注射などを行います。また肩関節の拘縮が見られるときには同時に運動療法も行います。比較的若年者や夜間痛などが消失しても挙上時の疼痛が残存する場合には鏡視下腱板修復術などの手術適応となります。
石灰沈着性腱板炎
40~50歳代の女性の肩に突然(特に夜間)激痛が生じ、肩関節の挙上が困難になります。腱板内に沈着したリン酸カルシウムの結晶による急性の炎症が原因です。診断にはX線(レントゲン)撮影が有用です。急性期には安静とともに石灰部の穿刺、吸引または滑液包内へのステロイド注射を行います。その後必要に応じて温熱療法(ホットパック)や運動療法(拘縮予防)などのリハビリが行われます。
変形性肩関節症
肩関節の軟骨が擦り減って変形し、肩関節の疼痛や運動制限が生じます。薬物療法や関節内注射、さらにリハビリテーションが行われますが、場合によって人工肩関節置換術が行われます。
腱板断裂症性肩関節症
腱板断裂が広範囲(2腱以上)に及んだ場合に、徐々に関節の変形が進行してきた病態です。症状として筋力の低下、肩関節の疼痛、挙上困難(偽性麻痺)が現れます。痛みだけであれば、保存的に治療を行いますが、肩関節の挙上が困難な高齢者にはリバース型人工肩関節置換術が適応になります。
上腕骨近位端骨折
高齢者が転倒時に手をついて受傷することが多く、骨粗鬆症を基盤として生じることが多い骨折です。転位が少なければ一般的には保存療法が選択され、早期に振り子運動などのリハビリが開始されます。転位が大きく、脱臼を伴っている場合には手術による骨接合が選択されますが、高齢者の粉砕の強い症例では人工骨頭置換術(肩)やリバース型人工肩関節も使用されます。
腰痛
腰痛の多くは、腰椎に負担がかかることで発症しますが、様々な病気が背景になっていることもあります。成長に伴って起こるもの(側湾症、腰椎分離症、先天異常など)、加齢によって起こるもの(椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、変性すべり症など)、腰椎の圧迫骨折などの外傷、感染や炎症によるもの(カリエスや化膿性脊椎炎など)、転移癌などの腫瘍によるものなどがあります。安静にしていても痛みが軽くならない、あるいは悪化する、発熱がある、足がしびれたり力が入らなかったりなどの症状を伴っている場合は、放置せずに整形外科の受診をお勧めします。
急性腰痛症(ぎっくり腰)
突然起こる強い腰の痛みで、何かを持ち上げようとしたときや腰をねじる動作をしたときに起こることが多く、場合によっては動けなくなってしまうほどの激痛が現れます。痛みの原因は様々ですが、腰が動く関節部分や椎間板、または腰の筋肉や腱・靭帯などの軟部組織に許容以上の負荷がかかり損傷が生じることが考えられます。しかし、足に痛みやしびれがあったり、力が入らなかったりなどの症状がある場合は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの病気の可能性もあります。通常ではない強い腰痛があったときや2週間以上改善しない場合には、受診して正しい診断を受けることが大切です。
腰椎椎間板ヘルニア
症状としては腰やでん部の痛み、下肢にしびれや痛みが生じます。足に力が入りにくくなることもあります。治療は強い痛みがある時期は、安静を心がけ、コルセットを装着します。消炎鎮痛剤、坐薬、神経ブロック(炎症を抑える薬剤の注射)などで痛みを緩和します。痛みが軽くなれば、運動療法を行うこともあります。一般的には手術をしないで軽快しますが、下肢の脱力、排尿・排便障害が生じた場合には手術が必要になります。
腰部脊柱管狭窄症
加齢、労働などによって変形した椎間板と、突出した骨などにより、神経が圧迫されることによって起こります。特徴的な症状は、歩行と休息を繰り返す間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。腰痛は強くなく、安静時はほぼ症状はありませんが、長く立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが生じて歩きづらくなります。前かがみになったり、腰かけたりすることで症状が軽減します。また、症状の進行とともに歩行可能な距離や時間が短くなってきます。保存的治療はリハビリテーションやコルセット、神経ブロック、脊髄神経の血行を良くする薬物療法などがあります。
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