
骨粗鬆症
骨粗鬆症
骨密度は50歳ごろから低下し始めますが自覚症状が乏しく、骨折に気づかないこともあります。
また高齢者の骨折は寝たきりの原因となるだけでなく、生命予後にも影響します。そのため、治療介入による骨折の予防が非常に重要になります。
当院では骨密度測定器による腰椎、大腿骨骨密度の測定が可能です。定期的に骨密度に加え、骨代謝マーカーの測定を行うことで、一人ひとりに最適な骨粗鬆症治療を行います。
老化などが原因で骨量が減少し、骨が弱くなり骨折リスクが高くなってしまう疾患です。骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量(骨密度)は、20〜30歳頃の若年期をピークに、その後は徐々に減少していきます。
この骨密度が低下すると、骨粗鬆症といわれる状態になり、ちょっとした転倒で骨折を引き起こします。背骨に骨折が生じるとその部位の疼痛で動けなくなり、背中が曲がり、身長も縮んでいきます。
最近では、高血圧、動脈硬化、糖尿病、腎機能障害、慢性肺疾患などの生活習慣病を患っている方は、とくに骨折の危険が高いことが分かっております。当院の内科で生活習慣病に対して通院加療されると同時に骨粗鬆症の精密検査、さらに必要に応じて治療介入をお勧めいたします。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル量(骨密度)の低下が骨折リスクに大きく影響していることは間違いありません。しかし骨密度が正常でも一般の方と比較して骨折をおこしやすい方がいらっしゃいます。特に生活習慣病の罹患患者ではコラーゲン同士を繋ぐ架橋の異常によって骨質劣化をきたしやすくなります。
骨粗鬆症は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に特に多くみられます。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
閉経後エストロゲンの分泌量が減少すると、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。そのため、閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めます。50歳になる前に一度は骨粗鬆症の精密検査を受けるようお勧めいたします。
一方では、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗鬆症の原因と考えられており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗鬆症も問題視されています。
骨粗鬆症の診断には、骨密度の測定、X線検査、身長測定、血液・尿検査などが行われます。
骨密度の測定
骨の強さを測定する際の重要な尺度の1つに「骨密度」があります。当院では骨密度測定装置(DEXA)を導入し、この検査機器による骨密度の測定(DEXA法)を行っております。定期的な(4か月から1年に1回)のDEXA法による大腿骨、腰椎等の検査をお勧めいたします。
X線検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のエックス線写真を撮り、骨折や変形がないか、また「骨粗鬆症」の有無(骨に鬆が入ったようにスカスカになっていないか)を確認します。(慈大式分類)
身体測定
20歳の頃の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。身長低下が2㎝未満であれば加齢による変化が考えられますが、4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、背骨を骨折している可能性が2倍以上高いという報告があります。
血液検査・尿検査
骨代謝マーカーを調べることにより、骨の新陳代謝の速度がわかります。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。
骨粗鬆症の原因のうち、年齢や性別遺伝的な体質などは変えることができません。しかし、変えることのできる要素、つまり食生活や運動などの生活習慣を見直すことにより予防と改善が可能です。
骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質、および骨のリモデリングに必要なビタミンD、Kなどです。カルシウムは食品として700〜800mg/日、ビタミンDは400〜800IU/日、ビタミンKは250〜300μg/日を摂取することが推奨されています。
これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。
骨粗鬆症の患者が避けるべき食品は特にありませんが、過量のアルコール・カフェイン摂取は、カルシウムの吸収を妨げ、尿からカルシウムの排泄量を増やします。またリンを摂りすぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招くため、注意が必要です。
カルシウム | 牛乳、チーズ、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤなど |
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タンパク質 | 肉類、魚類、卵、乳製品、大豆など |
ビタミンD | あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、うなぎの蒲焼き、きくらげ、煮干し、干し椎茸など |
ビタミンK | 納豆、抹茶、パセリ、しそ、モロヘイヤ、春菊、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にらなど |
骨は運動をして負荷をかけることで増え、より丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで体をしっかり支えられるようになったり、バランス感覚がよくなかったりし、ふらつきが少なくなって転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗鬆症の治療には欠かせません。
骨量を増やすには、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなどの中程度の強度の運動が効果的で、激しい運動をする必要はありません。散歩などを、可能なら毎日、あるいは週に数回でも有効ですので、とにかく長く続けてください。運動量を少しでも増やそうとする心がけが大切です。
症状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。
現在使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。
また、腰や背中などに痛みがある場合は、痛みを取る薬も用いられます。
どんな薬を選び、いつから治療を開始するかについては、個々の患者さんの年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら医師が判断します。
現在、治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。
ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑制することによって骨形成を促し、骨密度を増やします。骨粗鬆症の治療薬の中でも特に有効性の高い薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨に届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨が出来上がります。
SERM(サーム:塩酸ラロキシフェン)
骨に対しては女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
副甲状腺ホルモン製剤
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて自己注射する薬(1日1回又は週2回)と、週1回当院で注射する薬があります。複数の骨折が起こっている、骨密度が著しく減少しているなど、重症の患者さんに対して用いられます。
活性化ビタミンD
カルシウムの腸管からの吸収を増やす働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。
ビタミンK
ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促し、同時に骨吸収を抑制することで、骨代謝のバランスを整え骨の質を改善します。骨折を減らす効果が認められています。
カルシトニン製剤
骨吸収を抑制する作用があり、強い鎮痛作用も認められています。骨粗鬆症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。
坑RANKLモノクローナル抗体
破骨細胞は、骨芽細胞と結合することによって骨を壊す細胞になります。
この結合する部分(RANKL)をブロックすれば、結合することができなくなるため、骨は壊れなくなります。このようにして骨が溶け出していく過程が遮断され、骨粗鬆症を治療することができると考えられています。なお、この薬の特徴は、6か月に1回の皮下注射で済む点です(6か月製剤)。
ただし、血中のカルシウム濃度が下がりがちなため、ビタミンD製剤やカルシウム製剤を毎日服用していただくようになります。
抗スクレロスチン抗体製剤
骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対して1か月に1回、12か月皮下投与します。この薬剤は骨形成を促進し、骨量の減少を抑えて骨密度を増やして骨折を予防します。
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